1992年11月に開催された大阪府立大国際シンポジウムでは、地球環境分野で活躍するアジア・米国研究者が一堂に介し、経済活動の自然生態系への影響をテーマに講演が行われました。

米ネバダ州砂漠研究所エネルギー・環境工学センターのW・ピアソン所長は、自動車の排気ガスが対流圏(地表から高さ約10キロまで)のオゾン生成の要因になっていると報告しました。

対流圏のオゾンは光化学スモッグの原因になり、肺機能や植物に悪影響を与えますが、米国では大気中の濃度が90以上の大都市で基準をオーバーしていることを指摘。

自動車排ガスに含まれる揮発性有機物質やNOxをもとにつくられやすいためです。

排出量の半分を、全体の8%のエンジンを置き換えた車や整備不良車が出しています。

ピアソン教授は「高排出車をなくすなどの抜本的対策を採らなければ、対流圏のオゾン濃度は今後50-100年以内に50%程度上昇する」と強調しました。

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国立環境研究所の秋元肇統括研究官は、人口が増えているアジアでは汚染物質の排出量が急増していると発表。

1975年から1987年の12年間に、アジアでのSO₂、NOxの人為的排出量はともに1・6倍にアップしました。

このまま伸びると、2000年には硫黄分として年間に2340万トン、窒素分で750万トンが排出されると試算。

こうしたガスは対流圏オゾンも増加させ、2000年には東アジアの汚染のひどくない地域でも50(ppmの1000分の1)となり、わが国の環境基準(60)に迫る勢いです。

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中国四川省の大気汚染調査を日中共同で行った成果を報告したのは大阪府立大工学部の前田泰昭教授。

1991年秋、1992年夏に測定した重慶市中心部のSO₂濃度は、大阪市中心部よりそれぞれ約10倍、4倍高く、SO₂による大気汚染や酸性雨が犯人とわかりました。

一方、中国科学院生態環境研究中心の馮宗イ副所長が酸性雨に近い溶液をつくり、30種の樹木への影響をみたところ、酸性雨に弱い樹木、強いタイプがありました。

弱いものは汚染の指標植物になり、強いものは環境改善に役立つと提案しました。

人間活動と都市気候の関係を長年調べている大阪府立大農学部の小元敬男教授は、東京や大阪では十数年前までヒートアイランド現象が続いてきましたが、それからは横ばい状態になったと報告しました。


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戸川利郎